企業が成長戦略や事業効率化のために組織再編を検討することがあります。組織再編にあたって検討しないとけない事項はたくさんありますが、その1つが許認可の問題です。
その、「改めて許認可を取り直す必要があるのか」「どんな組織再編でも許認可は引き継げないのか」といった問題についてここで言及します。
許認可は、原則として特定の法人に対して付与される権利であって、その法人格が消滅すれば許認可も同時に失効するのが基本的な考え方です。しかし、企業活動の継続性や取引の安全を考慮し、許認可について規律した各法で、組織再編に伴う許認可の承継について特別な規定を設けていることもあります。
また、許認可の承継の有無は組織再編の形態によっても異なるということです。法人格が存続する場合と消滅する場合では取り扱いが根本的に異なります。
組織再編の手法は次のように多岐にわたります。
このそれぞれについて、許認可の状況が引き継げるのかどうかを見ていきましょう。
合併には次の2種類があり、許認可の承継に関しても判断が分かれます。
吸収合併では、一方の会社が存続しているということもあって、消滅会社の許認可を承継できるケースが多いです。ただし、建設業許可のように営業所の所在地や技術者の配置状況を個別に審査する許認可では、承継後に変更届や新規申請が必要になることもあります。
新設合併では既存の会社がすべて消滅するため、新設会社ではあらためて許認可を取得するための手続きを行わなければなりません。
会社分割にも次の2パターンがあり、それぞれで許認可の取り扱いに違いが生じます。
吸収分割の場合、承継会社の法人格はすでに存在していますので、許認可の承継が認められることが多いです。ただし、分割される事業範囲と許認可の対象範囲が一致しているかの確認は必要です。
一方、新設分割で新たに設立される会社が許認可を要する事業を承継するときは、基本的に許認可の新規取得が必要です。
組織再編には株式交換や株式移転という手法もあります。
いずれのパターンでも、完全子会社となる会社の法人格は存続します。そのため子会社が保有する許認可もそのまま維持されます。この組織再編は株主構成を変更するに過ぎず、事業を行う法人格自体に変更がないためです。
事業譲渡と呼ばれる手法も利用されることがあります。
これは、会社が自社の事業の一部または全部を、売買契約などに基づいて別の会社に譲り渡すことを意味します。会社そのものは残りますが、譲渡した事業は相手方の会社に移ります。
ほかの組織再編とは異なり、事業譲渡は売買契約に基づく財産の移転に過ぎません。そのため許認可は譲渡対象財産に含まれず、許認可を要する事業を譲り受けた会社は、原則として許認可を取得しなくてはなりません。
許認可が承継できるかどうかに関しては、組織再編の手法に基づく上記のセオリーだけでなく、必ず個別の法令をチェックするようにしてください。原則的には承継が認められる場面でも、例外規定が適用され別途手続きが必要となる可能性があります。想定通りに事が進まず事業が一時停滞するおそれもありますので、組織再編の検討段階から所管行政庁には相談をしましょう。より個別具体的なアドバイスをもらいたいときは、行政ではなく専門家にも相談すると良いです。