相続で、実家やその他の家屋・土地を突然引き継ぐことになるかもしれません。そして取得した不動産については相続登記を行うべき義務が相続人には課されますので、遺産分割や遺言によって取得した方は登記申請に対応する必要があります。
しかし、取得した建物が未登記であるケースも存在します。この場合はどのように相続登記を進めれば良いのでしょうか。当記事では未登記建物を相続したときの対処法について解説していきます。
未登記建物(未登記家屋)とは、物理的には存在しているものの、法務局の登記簿に記載されていない建物のことを指します。
本来であれば、建物を新築した場合は1ヶ月以内に「表題登記」を行い、その後「所有権保存登記」を行うことで正式な手続きが完了します。
※表題登記:建物が新築されたときに最初に申請する登記。所在地や種類、構造、床面積、新築年月日などの物的状況を記載する。
※所有権保存登記:権利部に所有権を記載する登記のこと。
未登記建物が発生する理由はさまざまですが、比較的築年数の古い建物に多く見られます。住宅ローンを組まず自己資金で建築された建物や、建築後に所有者が亡くなってしまい手続きが放置されたケース、増築部分の登記を忘れてしまったケースなどが挙げられます。
建物が未登記なのかどうかは、固定資産税の課税明細書を確認することでわかります。
登記されている建物には「家屋番号」が記載されるのですが、未登記建物の場合は家屋番号の欄が空白になっているか、「未登記」という記載が入ります。
課税明細書が見当たらないという方は、市区町村の固定資産税担当部署に名寄帳の交付を請求することで確認できます。
2024年4月から相続登記は法律上の義務となりましたが、この制度と未登記建物はどのような関係にあるのでしょうか。
実は、未登記建物は相続登記義務化の直接的な対象ではありません。なぜなら、相続登記の義務化は「すでに登記されている不動産の名義変更」を対象としているためです。
ただ、だからといって何も手続きをしなくて良いということではありません。相続登記の義務を課す制度とは別に、そもそも表題登記は法律上の義務だからです。
(建物の表題登記の申請)
第四十七条 新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
不動産登記法の条文にあるとおり、建物の表題登記は「しないといけないもの」です。そして相続人がもともとの所有者ではなかったとしても、同条分では当該建物を取得した方に対しても義務を課していますので、登記申請に対応しなくてはなりません。
建物を取得してから1ヶ月以内に申請する必要があり、これを怠った場合、10万円以下の過料を課される可能性があります。実際に過料が課されるケースは多くありませんが、法律上の義務であることに変わりはありません。
遺産分割協議、あるいは遺言書の記載に従い未登記建物を含む財産を相続・遺贈で取得したときは、司法書士にご相談ください。
司法書士は相続問題を含む法律や登記の専門家ですので、遺産分割に関することのほか、未登記建物に困っているときにも各種手続きをサポートすることができます。
たとえば「建物表題登記の申請」や「所有権保存登記の申請」の手続きを進めることになるのですが、これらを一般の方が進めていくとなれば大変な作業になるでしょう。登記申請書を作成するために必要な情報を集めなくてはなりませんし、添付書類の準備も必要です。
未登記建物をそのまま放置することで、過料に課されることのほか、さまざまなリスクが発生します。
問題点 | 詳細 |
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売却や担保設定ができない | 登記されていない建物は、第三者に対して所有権を証明することが困難。その結果、将来的に建物を売却したくなっても買い手が見つかりにくく、金融機関に担保として提供するのも難しくなる。 |
相続トラブルの原因となる | 時間が経過すると相続人の数が増え、遺産分割協議がより複雑になる。また、相続人の中に認知症を患う方がいると成年後見人の選任が必要になるなど、手続きがさらに煩雑になる。 |
権利関係が複雑になる | 長期間放置していると、建物の所有権が誰にあるのかが不明確になり、最悪の場合、所有権を失ってしまう可能性もある。 |
より問題を大きくさせないよう、未登記建物の存在がわかった段階で早めに動き始めるようにしてください。